コース
菜花昆布〆 とろろ このこ/子持ちヤリイカ旨煮/白海老 桜葉寿司/一寸豆塩湯/百合根クリームチーズ 合鴨つくね串
金地の盆に小さな器が並ぶ。桜の枝が1本添えてある。
菜花の昆布〆にとろろとこのこ。子持ちヤリイカの旨煮。桜の葉に包んだ白海老の寿司。一寸豆の塩湯。百合根のクリームチーズと合鴨つくねの串。
菜花と白海老は、どちらも甘みが上品に立つ。百合根クリームチーズと合鴨つくねだけが濃厚でまろやかな方向に振ってあって、盆の中で一段重い。
帆立真薯 才巻海老 香味海苔 若布 はり独活 木の芽
朱塗りの椀に香味海苔が広がり、帆立真薯の上に針打ちの独活と木の芽がのる。
出汁の旨みがしっかり感じられて、上品なのに奥が深い。帆立真薯と才巻海老の風味がそこに乗り、香味海苔と若布がさらに引き立てる。前菜が軽かったぶん、ここで一度濃さが来る。
御造里 本日の二種
この日の2種は鮪と鯛。
上品な出汁醤油で食べる。鮪も鯛も新鮮な旨みがあり、醤油とよく合う。派手なことはしていないぶん、素材の良さがそのまま出る。
近江牛と筍 木の芽焼き タラの芽
近江牛は中心が赤く残る火入れ、筍は焼き目がついている。タラの芽は衣をつけて揚げてある。
木の芽焼きにすることで筍の風味が引き立つ。そこにタラの芽のほろ苦さが加わって、上品なだけで終わらない奥行きが出る。牛と筍という組み合わせだけなら重くなりそうなところを、揚げたタラの芽1本が引き締めている。
伊勢海老フライ 生雲丹 赤万願寺唐辛子 蕗のとう甘酢あん
揚げた伊勢海老に、緑がかったあんがかかっている。赤万願寺唐辛子が1本。
蕗のとうの甘酢あんは、ほろ苦さと爽やかな酸味が同時に来る。それが伊勢海老フライと生雲丹の濃厚な旨みを受け止める。揚げ物に甘酢あんという構成の中で、苦みだけがはっきり春のものになっている。
甘鯛 若牛蒡 蟹身 煮浸し 糸賀喜
皮目を立てた甘鯛の上に、糸賀喜が高く盛られている。
甘鯛はふんわりとした食感。そこに若牛蒡のシャキッとした歯ごたえと、蟹身のなめらかさが加わる。三つとも食感が違うので、煮浸しという静かな料理なのに口の中がずっと動いている。
筍と穴子 釜炊き 赤出汁 香の物
釜の中は筍の薄切りと焼いた穴子。木の芽が散らしてある。
穴子はふっくらとして香ばしさが際立つ。筍のシャキシャキ感と噛み合い、釜炊きご飯には出汁の旨みが染み込んでいる。赤出汁と香の物が付く。
水菓子・和菓子
水菓子はせとかと苺。せとかは瑞々しく、濃厚な甘みと爽やかな酸味が広がって、口当たりがとても滑らかだ。
和菓子は桜の葉で包んだ桜餅。春らしい爽やかな後味で終わる。
まとめ
旬房の乾山は月替わりの夜の会席で、三月は苦みで組み立ててあった。
木の芽、蕗のとう、タラの芽。この三つが焼物と合肴に入って、料理の方向を決めている。焼物では揚げたタラの芽が近江牛と筍を引き締め、合肴では蕗のとうの甘酢あんが伊勢海老フライと生雲丹の濃さを受ける。どちらも、重い素材の隣に苦い春の芽を置くという同じ手を使っている。
甘さのほうも春で揃っている。前菜の菜花と白海老、御食事の筍、締めのせとかと桜餅。8品を通して、苦みと上品な甘みが交互に来る。
食感の作り方も印象に残った。煮浸しは甘鯛のふんわり、若牛蒡のシャキッ、蟹身のなめらかさを1皿に入れてくる。静かな料理なのに口の中が動き続ける。
夜の乾山は前菜から釜炊きまで8品あるので、時間を取れる日に行きたい。三月でこれだけ春の芽が出てくるなら、筍が本格化する四月の乾山も見てみたい。