コース
松茸 蟹 菊花浸し 銀杏唐揚げ
貝の形をした器に、蟹と菊花のお浸し、松茸、緑の銀杏が二粒。上から削り節がかかっている。
銀杏の唐揚げにはほんのり苦みがある。蟹も菊花も松茸も繊細で軽いので、その苦みだけが輪郭として残る。1皿目から口の中がさっぱりと片づく。
海老真薯 かんな松茸 青味
蓋を開けた瞬間に松茸が香る。
椀の中は薄くスライスされた松茸で埋まっている。出汁そのものはすっきりしていて、押してこない。そのぶん海老真薯の繊細さと松茸の香りが前に出る。
御造里 本日の二種
この日の2種は鯵と大トロ。
鯵は生姜醤油をつけると味わいが際立つ。繊細なのに、後ろに深みがある。大トロは脂の乗りが濃厚で口の中でとろけ、旨味が広がる。軽いほうから重いほうへ、二切れで振れ幅が出る。
甘鯛若狭焼き 才巻海老 いちょう丸十 菊蕪
甘鯛の若狭焼き。外は香ばしく焼けていて、中はまったくパサついていない。
じっくり火が入っているので、身はふっくらしたまま甘鯛特有の深い旨味と繊細な甘さが出てくる。並ぶ才巻海老も海の風味をたっぷり持っている。
皿には紅葉と銀杏の葉、それにいちょうの形に抜いた黄色い丸十。九月の皿として、目のほうから先に季節が来る。
キビまる豚角煮 栗 京茄子 青味
キビまる豚の角煮は、煮込み方が絶妙で、肉が口の中でとろける。
タレとマスタードが添えてある。マスタードが入ると脂の重さが消えて、すっきりした味になる。付け合わせの京茄子と栗の甘さも角煮を引き立てる方向に働いていて、重いはずの1皿が重くならない。
秋鮭釜炊き御飯 いくら 味噌椀 香の物
秋鮭の釜炊き御飯。釜のまま供される。
炊き上がりの旨味がご飯全体に染み込んでいる。そこに別添えのいくらを乗せると、プチプチとした食感がアクセントになる。味噌椀と香の物が付いて、ここで秋鮭がこの日の締めの食材になる。
水菓子・和菓子
水菓子は梨とピオーネ。どちらもみずみずしい。梨は自然な甘さで、ピオーネは果実味らしい甘さ。方向の違う甘さが二つ並ぶ。
和菓子は餡の菓子が別の皿で出てくる。
まとめ
旬房の光琳は月替わりの昼の会席で、九月はとにかく秋の食材だけで押してくる。松茸、銀杏、栗、京茄子、秋鮭、梨とピオーネ。先付から水菓子まで、1皿も外れがない。
面白いのは、同じ食材を役割を変えて出してくるところだった。松茸は先付では蟹と菊花の脇で軽く効かせ、御椀では薄切りを大量に使って香りだけを取りに行く。銀杏も、先付では唐揚げにして苦みを立て、焼物では葉の形をした丸十として皿の景色になる。
味の設計も1本通っている。銀杏の苦み、マスタードの辛み、生姜醤油。どれも重さを切るために置かれていて、7品食べても最後まで軽い。会席としては当たり前のことかもしれないが、それをホテルの中でこの精度でやっているのがこの店だと思う。
昼に時間が取れる日に、季節が変わる直前を狙って行くのがいい。九月でこれなら、松茸と栗がもっと出てくる十月の光琳も見てみたい。